中学3年の歴史は本当におもしろい。

中学3年生の歴史は現在、第一次世界大戦のあたりを学習している。

 どの時代だって、その時代のおもしろさがあり、このあたりも例外ではない。

 しかし、現代が形作られるという意味で非常におもしろく、テストに出るからと闇雲に勉強するにはもったいない分野なのだ。

 

 私は公立中学で10年間社会を教えてきた。他の業務に忙殺される中で満足に教材研究できない日々も多かったが、それでも10年のキャリアをつめば一角の者にはなれる。覚えないといけない用語や人物名が多い社会科で、暗記する苦労を軽減するためには生徒たちの記憶に残るような話をし、写真を見せ、ある事件の原因と結果がどうつながっているかを話す。 実際の歴史では、そんなにつながっていないかもしれないし、他の要因もあっただろう。現実はそんなに単純ではない。それでも私は複雑なものを単純化して話す。 取るに足らないことを、さもおもしろそうに話す。彼らの想像を打ち砕くような話題を探して話す。人は自分の予想が裏切られたときに強く記憶するからだ。 それでいいと思っている。嫌いな歴史を少しでもおもしろそうと思ってくれたり、歴史における自分の位置を感じられたら十分だ。 

 

 しかし、理想を言えば、歴史を学ぶことを通して、社会の見る目を養ってほしいと考えている。

 

 さて、話を第一次世界大戦に戻そう。

 純な中学3年生は戦争は良くないものだ思っている。もちろんその通りだ。否定する気はない。

 そしてではなぜ戦争がなくならないかについては悶々としている。そこに私は切り込んでいく。

 

 第一次世界大戦は様々な武器を使用した。

 機関銃、戦車、飛行機、毒ガス・・・

 戦争は技術の発展を促すという面があることを説明する。

 それだけ教えても記憶に残らないから、それぞれの写真を見せ、機関銃で戦うために塹壕が掘られたこと、長いものは800kmも続いたこと、塹壕の中で兵士が寝泊まりしていたこと、雨が降ったら塹壕に水がたまり、長靴の中にも水が入ってきて凍傷になったり水虫になったり・・・という話をすると、女子が「キャー」と声を上げる。

次の話題へ。

 

第一次世界大戦に日本は戦場にならなかったため、武器を作るための鉄を作る会社や、輸送のための船を作る会社が大きな利益を得て、”成金”が出てくる頃である。

 

右の絵は必ず教科書に出てくる”成金”だ。

料亭で遊んだ後に、暗くて靴が探せない女の子のために、成金が紙幣を燃やして灯しを得ている風刺画である。

 

戦争でかなり儲かる人たちがいるんだよ、戦争がなくならない理由の一端をここで示せる。

 

教科書では、”第一次大戦は日本に好景気をもたらした”で終わりますが、もう一歩踏み込んで、”戦争によって儲かる人・企業があるから、戦争が簡単にはなくならない”ってことも中学生には話しておきたいものです。

 

次は、第一次世界大戦中にロシアで起きた”ロシア革命”について。

 

この写真はレーニンの演説の様子で、教科書によく出てきますが、たくさんの人々に熱狂をもって迎えられたことがわかります。 

 

ここから、社会主義とは「平等な社会を目指そうという考え方」であることを学び、「社会主義は○○主義への不満から生まれました。日本は〇〇主義。さて、○○に入る言葉は? 給料はみな同じじゃないよね。格差が問題になる社会だよね」という具合に進めます。

 

そして北朝鮮も社会主義国である話をして、世界の見方というものを何とか身につけてほしいと思うのであります。

 

このような感じで、たくさんの写真をプレゼンテーションテキストに落とし込んで、時には動画も見せて、歴史をおもしろいと感じてほしい、欲を言えば、社会の見る目を養ってほしいと思っているわけです。 90分の授業のために3~4時間準備することになります。それでも、生徒たちが笑ってくれて、帰るときに「楽しかった」とか、「歴史って意外とおもしろいかも」とか、何となく元気になって帰ってくれたらいいなと思います。